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夜行観覧車
夜行観覧車
ある高級住宅街での殺人事件。
それは豪邸に住み優しい両親と成績優秀な礼儀正しい3人の子どもたちのいる、幸せを絵に描いたような一家で起きた。
父親が被害者、母親が加害者・・・それを知った子どもたちは周囲の目におびえながらも懸命に真実を知り前に進もうとする。
事件のあった家の向かいに住む3人家族、その裏に住むひとり暮らしの女性、問題を抱えるそれぞれ家の視点からも事件の真実が
暴かれる。
2013年1月から3月までTBS系で放送されていた同名タイトルドラマの原作です。
著者は湊かなえさん。
一番印象に残っているのは遠藤家のひとり娘・彩香が母親のことを「あんた」と呼び、ちょっとしたことで癇癪を起こし暴れるシーン。
ドラマでもそのシーンは毎週「こわい」と思いながら見ていました。(だったら見なきゃいいのに・笑)
彩香がそんなふうになってしまったのには訳があって、それはそれでかわいそうだと思うのですが、もし自分の娘に「あんた」呼ばわりされたら
私のほうが癇癪を起こしそうだな・・・なんて思います。
でも彩香の気持ちを知らずに、悪気なく彩香の気に障ることを言ってしまう母親・真弓の姿には思わずはっとさせられました。「悪気がない」っていうのが実は一番厄介なんですよね。かくいう私も、何気なく言ったひとことで周りの人を傷つけていることがあると思います。申し訳ないことです・・・。
原作では、他の家から聞こえてくる大きな声や物音に気づきながらも、「様子を見に行ったほうがいいかしら。それとも知らないふりしたほうがいいかしら。」と迷うそれぞれの家同士の距離感がとてもリアルだなと思いました。
登場人物のプロフィールを入念に練り上げてから執筆に取り掛かるという湊かなえさん。それぞれ誰かモデルとなる人物がいるのかと思うほど細かい描写がされています。そのあたりもおすすめのポイントです。
幸せそうに見えた高橋家が抱えていた問題、住宅街の主のような存在の小島さと子が感じていた寂しさ・・・三つの家の問題は、実は私たちのすぐ身近にある問題だと思います。大切に思うあまり、一歩間違えれば傷つけ合ってしまうかもしれない家族。
「家族を愛する」ということはそう簡単ではないのかもしれません。
それでもそれを乗り越えていけるのも家族だからこそなのだと、改めて夫や娘たちをはじめ、両親や妹一家、家族みんなのことを大切に思いました。